キーワード:ウエルネス状態、コンディション、バスケットボール
スポーツ競技には、大きく分けて個人競技と団体競技があります。選手のパフォーマンス評価をする方法は、個人競技の場合、水泳や陸上はタイムや距離、体操やフィギアスケートは得点、柔道では勝敗を用います。団体競技の場合、サッカーやバスケットボールなどは得点で評価しますが、それを直接活用して、選手1人の競技パフォーマンスの出来具合を示すことは、難しいことと思います。しかし、選手のパフォーマンスの評価をしていかなければ、パフォーマンスの変化やスキルの向上などに繋げることが不可能です。
そこで、今回はGarcía, F.ら(2022)の論文を参考にしながら、団体競技であるバスケットボール選手のシーズン中パフォーマンス評価について検討しました。
(evidence)
15名のプロ男子プロバスケットボール選手(ガード9名、フォワード6名)を対象に、シーズン中の7ヶ月間、試合中のパフォーマンスとトレーニング負荷及びウエルネス状態との関連性を評価しました。
評価方法は、外部負荷変数(先行研究1,2)と同様に距離や加速度など)、内部負荷変数(RPE)、ウエルネス状態(Hooper)を算出しました。さらに試合中のパフォーマンス評価方法は、ボックススコアを使用してパフォーマンス指標評価(PIR)とプレイヤー総合貢献度(PTC)を使用しました(表1)。
(表1)評価方法と詳細について
評価 | 方法 | 詳細 |
外部負荷変数 | 先行研究と同様 | 距離、加速度、減速度、衝撃、ジャンプ、着地、選手の負荷測定 |
内部負荷変数 | RPE | バスケ終了後15分~30分の間に評価 (1(非常に低い)~10(非常に高い)の10段階) |
ウエルネス状態 | Hooper | バスケ開始の30分前に評価 (4つのカテゴリー【ストレス、疲労、睡眠の質、筋肉痛】をそれぞれ 1(非常に良い)~7(非常に悪い)で評価して、合計を出す |
パフォーマンス指標評価(PIR) | 得点+リバウンド+アシスト+スティール+ブロック+ファウル数)- フィールドゴール失敗+(フリースロー失敗+ターンオーバー+ショット拒否+ パーソナルファウル数) | |
プレイヤー総合貢献度(PTC) | 1ポイントメイク+ブロックメイク0.91+ディフェンスリバウンド0.58+オフェンスリバウンド0.92+スティール0.86+アシスト0.48+フィールド0.23‐フィールドゴールミス0.91- フリースローミス0.57-ターンオーバー0.86‐パーソナルファウド0.23 |
結果として、ウエルネス状態の評価項目であるストレスと疲労については、ストレス値が安定しているプレイヤーが、ストレス値の変動が大きい選手よりも有意に高いPTCおよびPIRスコアを示しました。ポジション別による疲労の値の違いについては、ミクロサイクル(1~2週間のトレーニング期間)で疲労の値が安定している場合、ガードはフォワードと比較して高いPTCスコアを示すなど、ウエルネス質問票は、試合関連の個人統計と有意に関連していました。一方、トレーニング負荷変数と試合成績との間に正の関係は見られませんでした。
結論、試合中のパフォーマンスは、ウエルネス状態およびポジションやプレイタイムと関連性があることから、選手のパフォーマンスを理解するためには、総合的なアプローチでパフォーマンスを評価する事が必要です。
(参考文献)
1)García, F., Castellano, J., Reche, X., & Vázquez-Guerrero, J. (2021). Average game physical demands and the most demanding scenarios of basketball competition in various age groups. Journal of Human Kinetics, 79(1), 165–174.
2) García, F., Schelling, X., Castellano, J., Pla, F., & Vázquez-Guerrero, J. (2021). Comparison of the most demanding scenarios during different in-season training sessions and official matches in professional basketball players. Biology of Sport, 39(2), 237–244.
(文献)
García, F., Reche, X., Vázquez-Guerrero, J., Martín, J., & BUTLER, R. (2022). Relationship of training load and wellness status with player’s in-game basketball performance: An automated exploratory data analysis case: Basketball Performance Analysis. Studies of Applied Economics, 40(1).
選手がパフォーマンスを発揮、向上するために、栄養面からはスケジュールや試合時間を考慮した食事の内容や補食などについてお伝えしています。しかし、栄養士として重要なのはそれだけではなく、栄養サポートが試合のパフォーマンスに繋がっているか、練習や試合を見ることだと感じています。特にバスケットボールなど、シーズンが長期間に及ぶ競技種目は、選手のコンディションの経過を追っていくことが競技力向上を継続するための手段の1つであると考えています。
そのため、栄養サポートにおける団体競技選手のコンディションチェックでは、シーズン始まりを基準にして、試合の視察や上記の論文のようなパフォーマンス評価とウエルネス状態を追いながら、身体状況の客観的評価に有効な体重を活用しています。
さらに、現場を自分の目で確認して、選手と情報のすり合わせをすることで、食事のことだけではなく、日常生活からパフォーマンス評価に繋がるヒントが選手との会話から出てくることも多々あります。よって、論文上でも述べられていたように、選手のパフォーマンスを知るためには、多方面から情報を集めることが重要です。
まとめ
団体競技選手のパフォーマンス評価を行うために、ウエルネス状態およびポジションやプレイタイムと関連性があると述べられていました。選手やチームによって、サポート方法は様々だと思いますが、選手のパフォーマンスを理解するためには、専門分野からだけではなく、総合的なアプローチでパフォーマンスを評価する事で、さらに選手のパフォーマンス向上に繋がるきっかけになるかもしれません。
(文責)
吉本 寛那