はじめに:なぜチームスポーツでは「疲労管理=勝敗」になるのか
サッカーやバスケットボールのようなチームスポーツでは、選手は常に
筋力トレーニング × 持久的・高強度インターバル × 試合
という複数刺激を同時に受けています。
これがいわゆるコンカレントトレーニング(CT)です。
問題はシンプルで、
「全部やるほど強くなる」わけではなく
「やり方を間違えると全部の質が落ちる」
という点です。
現場では筋肥大や持久力よりも先に
“疲労のコントロール能力”がパフォーマンスを決める要因になります。
1. CTでパフォーマンスが落ちる本質は「干渉」より「疲労蓄積」
従来は「筋トレと有酸素の干渉」が注目されてきましたが、現場的にはこちらが重要です:
- 神経筋疲労の残存
- 代謝ストレスの蓄積
- 技術・判断スピードの低下
特に問題になるのはこの3つです:
●① 前日の筋トレが翌日の動作速度を落とす
→ スプリント・ジャンプ・切り返しに影響
●② HIITやSSG後の筋トレの質低下
→ 出力低下・フォーム崩れ・刺激不足
●③ 疲労状態でのSSG実施
→ 接触リスク・傷害リスク増加
2. 現場で最も重要な4変数(これが設計の軸)
CTの設計はシンプルにこの4つです:
① 強度(Intensity)
- 高強度(80%1RM以上)は「試合から遠い日に配置」
- 限界セットは頻繁に使わない
👉 実務ルール
“重い日は神経系を優先し、翌日はスピードを落とさない”
② 量(Volume)
- 多いほど良いは誤解
- チームスポーツは「最小有効量」で十分
👉 実務ルール
- 週6〜12セット/筋群で十分なケースが多い
- 試合期はさらに削減OK
③ 順序(Order)
最もシンプルで効果的な原則:
👉 基本は「筋トレ→スキル→コンディショニング」
理由:
- 技術・判断を優先する必要がある
- 疲労によるスキル低下を防ぐ
④ 回復(Recovery間隔)
- 高強度同士:最低24時間
- 試合前後は48時間管理が理想
3. 見落とされる最大要因:「トレーニング外の疲労」
現場で最も影響が大きいのはここです。
●移動(遠征・時差)
- 睡眠の質低下
- 神経系の回復遅延
●睡眠
- 1日1〜2時間の差でもパフォーマンス低下
- 傷害リスク増加
👉 現場対応
- 昼寝20〜30分
- 試合前2日間の睡眠確保を最優先
●栄養
- 特に炭水化物不足が問題
- グリコーゲン低下=出力低下
👉 現場対応
- トレ後:糖質+タンパク質同時摂取
- 試合期:糖質制限は基本しない
4. 現場で使える「CT設計のシンプルルール」
ルール①
👉 試合が近いほど“強度は維持、量は削減”
ルール②
👉 疲労が高い週は「スピード系を優先」
(重さより動作速度を守る)
ルール③
👉 HIITと筋トレは同日に詰めない(可能なら)
ルール④
👉 “失敗まで追い込むトレーニング”は試合期では基本使わない
5. コーチングの本質:最適化ではなく「破綻させない設計」
重要なのはこれです:
- 最大化ではなく最適化
- 追い込みではなく維持戦略
- 刺激より回復の設計
チームスポーツのS&Cは
“強くする仕事”ではなく“崩さない設計”に近い領域です。
まとめ
コンカレントトレーニングの本質は以下です:
- 干渉ではなく疲労管理
- 量ではなく最小有効刺激
- 強度ではなく配置戦略
- トレーニング外要因がパフォーマンスを決める
参考文献
Grammenou M, Nulty CD.
Managing Fatigue in Team Sports: A Brief Review of Concurrent Training Effects Within the Microcycle
Strength and Conditioning Journal, 2025

