COACH’S COLUMN
サッカー選手のトレーニング計画を科学で読み解く
〜シーズン中に強くなるための実践ガイド〜
筋力・パワー・疲労管理・ピリオダイゼーションを現場目線でわかりやすく解説
LIME PERFORMANCE ストレングス&コンディショニング サッカー選手・指導者向け

01
なぜシーズン中に体が落ちていくのか
プレシーズンに一生懸命トレーニングして体を作っても、試合シーズンに入ると「なんだか重い」「ジャンプが弱くなった」と感じる選手は少なくありません。これには明確な理由があります。
① 試合そのものが「大きな負荷」
サッカーの試合では、1試合あたり平均237m以上のスプリントが行われ、最大速度は時速30km超に達することがあります。また方向転換やジャンプも50〜60回以上。この激しい運動の後、筋肉のダメージを示す指標(クレアチンキナーゼなど)は試合後72時間もの間、高い状態が続くことがわかっています。つまり、試合後3日間は体が完全に戻っていない状態で練習しているケースが多いのです。
② ホルモンバランスの崩れ
シーズンが進むにつれ、筋肉を作るテストステロンが減り、ストレスホルモンであるコルチゾールが増える傾向があります。この状態では、どれだけトレーニングをしても体が適応しにくく、疲れやすくなります。研究では試合期終了時にテストステロン対コルチゾール比が約30%低下するという報告もあります。

③ 同時トレーニングの干渉
サッカーでは有酸素系の練習(走り込みやゲーム形式)と筋力トレーニングを同じ時期に行います。研究では、高強度の有酸素運動を行った後、最大8時間は筋力トレーニングのパフォーマンスが低下することが示されています。同じ日にフィールド練習と筋力トレーニングを続けて行う場合、筋力トレーニングは午後に回すのが基本です。
02
「週の設計」が最も重要な鍵
サッカーのシーズン中トレーニングで最も重要なのは、1週間(ミクロサイクル)の負荷設計です。試合という大きな負荷を中心に、回復・強化・テーパリングを配置することで、選手のコンディションを最大化できます。
週1試合のミクロサイクル例(土曜試合)

試合前後の「バッファゾーン」を守る
試合前24時間と試合後24時間は、ウエイトトレーニングを入れません。これは鉄則です。試合前は戦術確認と最終調整に集中し、試合後は栄養補給・アイスバス・ストレッチなどリカバリーに専念します。この「バッファゾーン」を守ることが、週全体の質を決めます。
筋力トレーニングは「試合の96時間前」に
筋力中心のトレーニングは、試合の4日前(96時間前)に行うのが理想です。これにより、試合前に十分な回復時間が確保できます。一方、パワートレーニング(ジャンプ系・バリスティック系)は試合の2日前(48時間前)まで許容できます。筋力トレーニングより疲労が少ないためです。

03
「波状ピリオダイゼーション」で柔軟に対応する
「ピリオダイゼーション」という言葉を聞いたことがありますか?簡単に言えば、強化する時期・維持する時期・休む時期を意図的に計画することです。
従来の「線形ピリオダイゼーション」は、毎週少しずつ負荷を上げていく方法ですが、試合が毎週あるサッカーでは現実的ではありません。試合が増えれば計画が崩れます。そこで現場で有効なのが非線形(波状)ピリオダイゼーションです。

週2試合の過密期には、筋力セッション(S1)を2週に1回に減らし、パワーセッション(P1)中心の週を続けます。選手の疲労感をモニタリングしながら、必要に応じてその都度調整します。
04
コンプレックストレーニングで時間を賢く使う
シーズン中は練習時間が限られています。そこで活躍するのがコンプレックストレーニングです。これは、重い負荷をかけた筋力エクササイズの直後に、爆発的なジャンプ系エクササイズを組み合わせる方法です。

例えば、バックスクワット4回の直後にボックスジャンプ4回を行い、休憩を挟んで繰り返す。これだけで筋力とパワーを同時に刺激できます。研究では、スクワットジャンプ高さ12%向上・スプリントタイム改善などの効果が報告されています。

05
「やりすぎ」より「適切な強度」が鍵
シーズン中の筋力トレーニングで重要な原則をまとめます。
| 変数 | 推奨アプローチ | 注意点 |
|---|---|---|
| 頻度 | 週最低1回(可能なら2回) | 週2試合の期間は週1回でも維持可能 |
| 強度 | 主要種目で約80% 1RM以上 | 低強度・多量より、高強度・少量が疲労少ない |
| セット数 | 3〜4セット(過密期は2〜3セット) | 試合前はセット数を減らして強度は維持 |
| 限界まで | 行わない | 追い込むと翌日以降の回復が遅れる |
| 伸張性負荷 | 減らすが、完全に排除しない | 傷害予防にも必要。量と頻度を試合日程に合わせる |

06
大学サッカー・ユース選手の特別な注意点
大学生や高校生のサッカー選手には、プロにはない独自のストレッサーがあります。授業・試験・レポート・寮生活のストレス。これらはトレーニングと同様に体に負担をかけます。

学業のピーク(試験期間)に先立って、練習時間を短縮し・強度を中程度に落とす計画を立てておくことが、シーズン後半のパフォーマンスを守る上で非常に重要です。
あなたのトレーニング計画、見直してみませんか?
LIME PERFORMANCEでは、選手個別の試合スケジュール・目標・体力レベルに応じたトレーニングプログラムを設計します。「試合期でも強くなりたい」「傷害なく1シーズン走り切りたい」という方、まずはご相談ください。
参考文献
- Wing, C. (2019). In-Season Strength and Power Training Considerations for Professional Soccer Teams Competing Within National Level Competitions. NSCA JAPAN, 26(4), 24–34. [Original: Strength and Conditioning Journal, 40(3), 12–22]
- Favero, T.G. & White, J. (2021). Periodization in College Soccer. NSCA JAPAN, 28(3), 60–69. [Original: Strength and Conditioning Journal, 40(3), 33–44]
- Silva, H., Nakamura, F.Y., Castellano, J., & Marcelino, R. (2024). Training Load within a Soccer Microcycle Week — A Systematic Review. NSCA JAPAN, 31(6), 21–30. [Original: Strength and Conditioning Journal, 45(5), 568–577]

