両脚トレーニングと片脚トレーニング、結局どっちが正解?

両脚トレーニングと片脚トレーニング、結局どっちが正解?

両脚トレーニングと片脚トレーニング、結局どっちが正解?現場での使い分け方

「スクワットは両脚でやるべき?それともランジやシングルレッグ系を増やすべき?」——このテーマは、チームスポーツの現場から一般の方のパーソナルトレーニングまで、非常によく聞かれる質問です。LIME PERFORMANCEが実際の指導方針として使っている考え方を、最新の比較研究を踏まえて解説します。

結論を先に言うと、「どちらが優れているか」という問いの立て方自体が、実はあまり現場的ではありません。両脚トレーニングと片脚トレーニングは、それぞれ得意な効果がはっきり分かれており、「目的に応じて使い分ける」のが正解です。以下、その理由と具体的な使い分け方を紹介します。

1. 両脚と片脚、効果に差はあるのか

筋力トレーニング未経験の男性を対象に、レッグプレスを使って「両脚で行うグループ」と「片脚を交互に行うグループ」に分け、8週間・週2回のトレーニングを行い、負荷量(総トレーニングボリューム)は完全に揃えて比較した研究があります。エキセントリック(伸張性)局面をゆっくり(3秒)行う、丁寧なテンポ管理をした点も特徴的な設計です。

結果は非常に興味深いものでした。両脚での最大挙上力(1RM)、膝の筋力(等尺性・等速性)、両脚でのジャンプ力(スクワットジャンプ・カウンタームーブメントジャンプ・ドロップジャンプ)については、両脚トレーニング群と片脚トレーニング群でほぼ同じように向上しました。つまり、片脚だけをトレーニングしても、両脚の総合力やジャンプ力は、両脚トレーニングと同じくらい伸びるということです。

一方で明確な差が出たのが「片脚だけの最大挙上力」です。片脚トレーニング群は、片脚の1RMが両脚トレーニング群よりも大きく伸びました(右脚・左脚ともに、両脚トレーニング群の伸びの1.5倍以上)。これは「トレーニングした動作パターンに一番強く適応する」という、トレーニングの特異性の原則を裏付ける結果といえます。

現場で押さえておきたい3つのポイント

  • 両脚の総合力・ジャンプ力を伸ばしたいなら、両脚トレーニングと片脚トレーニングはほぼ同等の効果
  • 「片脚だけの最大筋力」を高めたいなら、片脚トレーニングの方が明確に有利
  • 同じボリュームなら、両脚トレーニングは片脚トレーニングの約半分の時間で完了できる

2. 「鍛えていない方の脚」への効果(クロスエデュケーション)はどうか

片脚だけをトレーニングすると、鍛えていない反対側の脚にも筋力向上効果が及ぶ「クロスエデュケーション」という現象が知られています。過去の研究では、この効果によって鍛えていない脚の筋力が10〜25%程度向上したという報告もあります。

しかし今回の研究では、この「もらい効果」は明確には確認されませんでした。理由として考えられているのは、片脚トレーニング群が「同じセッション内で両脚を交互に」トレーニングしていた点です。左右を同じ日にまとめて行うと、神経系への刺激が相殺されやすく、日をまたいで左右別々に行う場合とは異なる結果になる可能性が指摘されています。

現場での応用ポイント
片脚トレーニングでクロスエデュケーションを積極的に狙いたい場合(例:片脚を負傷中で反対脚のトレーニングだけを行いたいケース)は、左右を同日にまとめて行うより、曜日を分けて行う方が理論上は有利に働く可能性があります。ケガのリハビリ計画を立てる際の一つの視点として覚えておくと役立ちます。

3. 現場でどう使い分けるか

時間効率を優先したいとき(チーム練習など)

片脚トレーニングは「片方ずつ」行うため、同じボリュームをこなすのに両脚トレーニングの約2倍の時間がかかります。多くの選手を限られた時間で指導するチーム練習の現場では、まずは両脚の複合エクササイズ(スクワット、レッグプレスなど)を土台に置くのが現実的です。

片脚の力やバランスを高めたいとき(スプリント・カッティング・着地動作など)

スプリント、方向転換、片脚での着地など、実際の競技動作の多くは「片脚で地面に力を伝える」場面です。こうした能力を高めたい場合は、片脚特有の筋力・安定性を狙って片脚系エクササイズ(スプリットスクワット、ランジ、シングルレッグプレスなど)を計画的に組み込む必要があります。両脚の総合力だけを伸ばしても、片脚の力は自動的には伸びないという点は、指導者として覚えておくべき重要な事実です。

左右差(アシンメトリー)が気になるとき

片脚ずつ負荷と挙上量を管理できるのは、片脚トレーニングの大きな利点です。左右の筋力差が大きい選手や、片側だけケガから復帰したばかりの選手には、片脚ごとに強度を調整できるトレーニングが適しています。

LIME PERFORMANCEでの実践例

当社では、シーズン前の基礎体力構築期には、時間効率を重視して両脚の複合エクササイズ(スクワット・レッグプレス系)をメインに据え、週の中で1〜2回、片脚系エクササイズ(スプリットスクワット、ステップアップなど)を「補強枠」として組み込むピリオダイゼーションを基本としています。

一方、シーズン中盤以降や、スプリント・カッティングの頻度が高い競技(バスケットボール、卓球のフットワークなど)の選手には、片脚での安定性・力発揮を重視するフェーズを設け、片脚系エクササイズの比重を増やします。左右差の大きい選手や術後リハビリのケースでは、患側・健側それぞれの挙上量を毎回記録し、差が縮まっているかを継続的にモニタリングしながら負荷を調整しています。

「両脚か片脚か」で悩む前に、まず「今のフェーズで何を伸ばしたいのか」を明確にすること。これが現場での意思決定の出発点です。

4. まとめ

  • 両脚の総合力・ジャンプ力を伸ばすには、両脚・片脚どちらのトレーニングでも同程度の効果が期待できる
  • 片脚だけの最大筋力を伸ばしたいなら、片脚トレーニングが明確に有利(トレーニングの特異性)
  • 時間効率は両脚トレーニングが優位。指導対象の人数や練習時間に応じて配分を調整する
  • スプリント・カッティング・片脚着地など競技特有の動作には、片脚系エクササイズを計画的に組み込む必要がある
  • 両脚と片脚は「対立する選択肢」ではなく、目的に応じて組み合わせる「相補的な手段」と捉える

チームや個人のトレーニング計画に、両脚・片脚の使い分けを取り入れませんか。

LIME PERFORMANCEでは、競技特性・シーズン・目的に応じたピリオダイゼーション設計から個別指導まで対応しています。

参考文献
Sato S, Nosaka K, Murakami Y, Kasahara K, Yosida R, Nakamura M. Comparison Between Bilateral and Unilateral Leg-Press Resistance Exercise Training for Their Effects on Muscle Strength and Jump Performance. Journal of Strength and Conditioning Research. 2026;40(9):1035-1042.